理事長室から NanoTerasuの登録施設利用促進機関として ―ナノテラス事業推進室の開設―

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理事長室から NanoTerasuの登録施設利用促進機関として ―ナノテラス事業推進室の開設―

雨宮 慶幸 AMEMIYA Yoshiyuki
(公財)高輝度光科学研究センター 理事長 President of JASRI

雨宮慶幸 JASRI理事長

 東北大学青葉山新キャンパスに建設された3GeV高輝度放射光施設NanoTerasu(ナノテラス)が本年4月から施設運用を開始しました。NanoTerasuは我が国初の第4世代放射光施設で、軟X線・テンダーX線のエネルギー領域の光がこれまでに比べて約100倍の輝度で得られるようになったことが大きな特徴です。NanoTerasuは、国の主体である量子科学技術研究開発機構(QST)と地域パートナー(光科学イノベーションセンター(PhoSIC)を代表機関とした宮城県、仙台市、東北大学、東北経済連合会の5者)による官民地域パートナーシップにより整備されました。
 これまで理化学研究所放射光科学研究センター(RSC)と共に、JASRIはNanoTerasuの整備に協力してきました。また、昨年8月にはJASRI内にナノテラス対応検討タスクフォースを立上げ[1]、登録機関の申請に向けて準備を行ってきました。その結果、本年4月1日をもってNanoTerasuの登録施設利用促進機関に登録されました。それに伴い仙台にナノテラス事業推進室を開設し、播磨の関係部門と連携をとり登録機関の業務を推進するための組織改編を実施しました。現在、NanoTerasu選定委員会の設置等、課題選定に向けての準備を開始したところです。当初は、共用ビームライン整備のPhase-IとしてQSTが設置した3本の共用ビームラインにおける共用業務(利用者選定と利用支援)を実施します。本年10月には共用ビームライン利用研究課題の募集を開始し、2025年3月に共用を開始する予定です。 
 今後、共用ビームラインにおける研究成果創出の最大化を目指して、QSTとの協力体制を構築していく所存です。また、共用ビームライン整備のPhase-IIは議論が始まったばかりですが、QSTと共同の高度化研究体制を構築して、その整備に積極的に参加して行きたいと考えています。 
 SPring-8/SACLA及びNanoTerasuは、世界の放射光研究の中核となるべき研究基盤施設であり、更に、SPring-8-IIの実現に向けた準備も進んでいます。JASRIとしては、これら先端的研究施設の中核として、他の施設ではできない役割を果たせるように、各光源の特徴を最大限に活かす運営を目指したいと考えています。SPring-8とNanoTerasuのワンストップ体制の構築、研究成果創出に必要とされる各種人材(研究者、技術者、コーディネーター等)の育成等を行い、利用者本位で研究開発による価値創出を「先導する」、「つなぐ」役割を果たしたいと思います。
前回の本稿[2]では、「JASRI Vision 2030」を紹介しました。その骨子は下記です。

I. 安全で安心な研究環境と職場環境を創る。

II. 施設者と密な情報共有と信頼関係を構築し、第4世代放射光施設(SPring-8-II・NanoTerasu)を核とした放射光研究をバランスよくリードする機関となる。

III. 利用者本位で、そのニーズに的確に応える利用者支援のための適切な仕組みを創る。

今後とも、皆様のご協力とご支援をお願い致します。 

 


参考文献

[1]「理事長室から 『ナノテラス対応検討タスクフォース』の設置」

[2]「理事長室から 今後に向けてJASRIの成すべきこと-JASRI Vision 2030-」

<過去の理事長室から>  
今後に向けてJASRIの成すべきこと-JASRI Vision 2030- Volume 29, No.1 Page 1
インテグリティ Volume 28, No.4 Page 343
「ナノテラス対応検討タスクフォース」の設置 Volume 28, No.3 Page 231
帰納法と演繹法-ChatGPTと新たなイドラ- Volume 28, No.2 Page 103
階層構造とウロボロスの蛇 − 宇宙~物質・生命・人間~素粒子 − Volume 28, No.1 Page 1
心理的安全性 − 安全・安心なJASRIを目指して − Volume 27, No.4 Page 293
SPring-8, be sustainable for SDGs! Volume 27, No.3 Page 186
Giver or Taker ? −相克から相補へ− Volume 27, No.2 Page 79
一隅を照らす −高輝度光源と照らし合わせて− Volume 27, No.1 Page 1
人材育成の原点 −第6期科学技術イノベーション基本計画に期待する− Volume 26, No.4 Page 340
待った無しの「2050年カーボンニュートラル」 −IPCC報告書を読んで− Volume 26, No.3 Page 250
JASRI創立30周年を迎えて Volume 26, No.2 Page 91
正見 −八正道と放射光科学− Volume 26, No.1 Page 1
一口講座:物理法則は数式ではなく量式である −数と量の混同について− Volume 25, No.4 Page 271
−夢なき者に成功なし− Volume 25, No.3 Page 210
−コロナ後の世界を考える− Volume 25, No.2 Page 87
−新年の抱負と健康長寿の心身の生活習慣− Volume 25, No.1 Page 1
−高輝度研究者センター− Volume 24, No.4 Page 364
−理事長に就任して− Volume 24, No.3 Page 249

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